桜井産業の歴史と技術紹介

良い製品は、良い商品を生み出す

先代から継承するロウ付けバイトの技術

より精密で複雑化する加工に対応するため、より付加価値の高いバイトの製作が必要となっています。高度経済成長期には、現在では想像もつかないことですが、ステンレスを効率的に切削できる刃物(バイト)はほとんど存在していませんでした。当社でもその当時、ステンレス用(現在の「MAX1Z」)のバイトを販売していませんでした。

ステンレス加工は、その特性として熱伝導率が低く、加工硬化しやすい性質を持っているため、従来の切削工具では効率的な加工が困難でした。しかし、多くの企業がステンレス加工に取り組む傾向から、需要の増加を見込み、ステンレスの切削条件を確立するために数多くのテスト加工とデータ収集を重ね、ステンレス用チップ「MAX1Z」が開発されました。その結果、ステンレス用バイトとして日本中で高い評価を得ることとなり、現在では大手切削工具メーカーもステンレス用バイトを製品化しています。

また、硫黄快削鋼用チップ「MAX22」も同様に、日本の加工業者の8割が切削に苦心していた状況を踏まえ、「MAX1Z」と同様の実証実験を経て開発されました。この開発により、硫黄快削鋼の加工効率が大幅に向上し、製造現場の生産性向上に貢献しています。現在は、より精密で付加価値の高い製品を提供するため、超硬材料に加え、単結晶ダイヤモンド製品など、顧客ニーズに応える製品開発を継続しています。

良い商品は、良い製品を生み出す。「日本の技術を伝えたい」

製造現場では、NC旋盤やマシニングセンターなどの自動機による生産ラインが主流となり、若い世代の多くは、実際のモノづくりの感覚よりも、制御パネルを操作する感覚で作業に従事しています。この技術革新により、生産効率は飛躍的に向上し、高精度な加工が可能となりましたが、その一方で、従来の職人が持っていた感覚的な技能や経験値の継承が課題となっています。しかし、これらの自動化されたラインは、本来、職人の手作業から発展し、オートメーション化されたものです。汎用機から自動機へと進化を遂げる中で、当社のバイトが継続して選ばれている背景には、確かな技術力があります。

切削工具メーカーとして、私たちは「バイトとは何か」という基本的な質問から、汎用旋盤とNC自動旋盤の違い、さらには直径や下逃げ、回転数・送り速度・切削条件といった専門的な内容まで、丁寧にご説明させていただいています。特に近年は、新素材の登場や加工技術の高度化に伴い、より専門的な知識とノウハウが求められています。当社は商社様からエンドユーザー様まで、幅広い流通機構を大切にしています。各企業が専門分野を持つ中で、ある業界では当然の知識でも、異なる分野では全く馴染みがないことも少なくありません。「聞くのは一時の恥、聞かずは一生の恥」という言葉の通り、不明点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に当社までお問い合わせください。

このような相互理解と技術交流が、企業間の歩み寄りを生み、技術向上へとつながり、ひいては日本の製造業全体の発展に寄与するものと確信しております。私たちは、これからも製造業の技術革新と人材育成の両面から、日本のモノづくりの未来を支えていきたいと考えています。

ロウ付けバイトと言えば「グランドローヤルの桜井産業」

切削工具業界において、ロウ付けバイトの代名詞として知られる桜井産業。その商標「グランドローヤル」は、特徴的なオレンジ色の箱に収められており、製造現場では親しみを込めて「オレンジバイト」と呼ばれています。半世紀以上にわたり、日本のものづくりの現場で愛用され続けてきた実績は、その品質と信頼性の証といえるでしょう。

この製品は、先代の桜井貞二郎が開発したもので、当時の切削加工における様々な課題を解決するための革新的な設計思想が込められています。特に、耐久性と切削性能のバランスを追求した製品設計は、現場のニーズを深く理解した上での成果でした。「良い製品は、良い商品を生み出す」という先代のモットーを企業理念として継承し、現在も高品質な製品の開発・製造に取り組んでいます。

この理念は、単なる製品づくりの指針にとどまらず、お客様の生産性向上と品質改善に貢献するという、より広い視野に立った使命として受け継がれています。これからも、技術革新と品質向上を追求し続け、日本のものづくりの発展に寄与してまいります。